投稿者:
• 2017/ 06/ 06 (火)

  歯を磨いてはダメ!
  -歯磨きを総括する-
 歯は磨くものではありません。ゴシゴシと擦っても、光る前に歯が削れて減ります。「歯を磨く」と言う生活用語は、歯の汚れを取り、歯の健康のための刷掃動作を「歯を磨く」と表現した我が国特有の慣用句として使っている。
子供の頃から朝起きると、親から「歯を磨け」、「歯を磨いてからご飯にしましょう」と言われてきました。思えば、4~50年前は、歯ブラシに歯磨き粉・砂(研磨剤)を付けて、何の抵抗もなく虫歯予防のため、ひたすら3・3・3方式(一日3回食後3分以内に3分間歯磨き)で、歯を磨くことが乳歯から永久歯萌出にいたる小中学校の保健指導に組み入れられ、歯を磨け、磨け!・・・運動で、「歯の健康優良児」が育ってきました。この方式の根拠は1943年Stephanが提唱したもので、食事後、歯面に付着した食べカス・糖質が口腔内細菌の養分となり、分泌物として酸を排泄して、歯の表層(エナメル質)の汚染停滞部の酸性度(PH5.4以上)が高まると、そこから脱灰(虫歯)が始まる。これが30分以上続くと、多数の常在細菌の活動と相まって、口腔内は不潔となり、唾液の感染防禦能の低下など、全身的背景のもとに口腔環境の悪化を招き、細菌の死骸や唾液成分などが付着し、バイオフィルム(微生物の膜)・歯垢・歯石などの堆積汚染物として停滞することにより、単純な歯肉炎から、歯槽骨の吸収を伴う歯周炎に移行し、さらなる悪化を招きます。従って、3・3・3方式歯の刷掃法は、妥当と言えますが、この方法を習慣的に励行している現代人は極めて少数と思われます。

 臨床歯科医の責務
次の2点に尽きると思う
1.適正な歯科治療
2.口腔清掃法の指導と患者の自覚
人は成長し、加齢とともに食性・食域習慣の負の影響を受けます。かって、歯は摂食時、線維性食材による自然清掃作用が信じられていました。1967年Èmslie,および1970年Ⅼöeらの実験で、適正な歯列弓(歯と歯の接触点)、個々の歯の形・豊隆、歯肉の形ちが咀嚼運動中、粉砕された食片(塊)が歯面と歯肉上を止まることなく流動的(Spillway)であれば、食材による自浄性が期待できるが、成人歯列には歯科治療痕(充填、歯冠修復冠)が見られることがあり、その密着性の不良部位や隠蔽された箇所は食物による自然浄化作用が及ばないことが証明されています。
従って、人の食生活において、歯の汚れ、歯垢や歯石の沈着は必然的で、自らの刷掃・清掃を励行するか、歯科医療担当者による人為的除去(機械的、化学的清掃)

に頼るほかありません。さらに人は生活を重ねるとともに、やがて身体的変化は歯や口腔に及び、虫歯や歯肉炎の発症、そして歯科治療の機会が多くなると、意外なことに、医原性疾患が生じる可能性を否定できません。多くの歯科治療の中で、総義歯の作製以外、良きにつけ、悪しきにつけ、歯周組織に影響を与えることになりますが、幸いにも、口腔は1日約1500mlの唾液が分泌されており、咀嚼作用による食塊形成とともに消化酵素による機能を高め、その流れを良くして食物中の酸を中和したり、口の中の汚れを洗い流してくれます。このような唾液による生理的防禦機構の存在で、治療的(人為的)刺激や変化に比較的順応性を有していると言えます。しかし、時によって、歯周組織の認容能を脱した刺激や変化は歯周組織の侵襲要因となります。あえて指摘するならば、虫歯が進行して、歯が大きく崩壊すると、病的歯質を削り、歯冠を人工的に修復します。この際、生体力学的材料に依存する歯科医療は技術的に精密誤差が生じ易く、永続的に口腔細菌の侵襲を受けることになるので、治療後(不良補綴物)の隠蔽部や粗雑面の汚れに対する刷掃と清掃の低下は虫歯の再発、歯周病の再炎を招く。問題は歯科治療で、歯垢・歯石沈着を助長したり、それらの除去を困難にする治療完了後の状況は誤った歯科医療の誹りを免れません。いずれの歯科治療後の歯や歯周形態は歯ブラシシングの効率の良い自浄性の付与であるべきです。したがって、大切なことは機能性と審美性とともに、歯ブラシの刷掃効率の高かい歯科治療が良質な治療であることを知っておくべきす。

 歯の健康は人生を快適にする
現代では、歯の健康と微笑み、口元もとの美しさが心身ともに、幸せな社会生活を育む源であることを知り、さらに、虫歯や歯周病が全身病との関わりや、歯・口の醜さ、口臭などが、対人関係を損ね、人格すら疑がわれ兼ねないことに気づくでしょう。
動物は「歯が無くなると死を悟る・・・」このことを我が家のペットから教えられたことでしょう。動物は歯を磨きません。口を漱ぐこともしません。動物達はそれぞれ、人間とは異なる固有の歯および口の形態、捕食能を有しています。彼らは自然界の生の動植物を食し、生の繊維性食材で自然に、歯や口の汚れを取り除く生存本能をもっています。しかし、近年のペット化した動物達は現代社会の人間と同様の食性・食域を持ち、食物に火を使い、切断し、柔らかく、粘性化と味付けした化学的加工の食品化など、飼い主と同じ嗜好の多様化に馴らされています。従って、ペット達にも歯周病の重症化がみられると言われています。こうした成熟社会の食生活では歯の機能と口腔の健康美を維持し、生涯歯(生命の続くかぎり噛める自然歯)を志向するための英知を持って、歯・口腔の汚れを取り除き、疾患の予防を図らなければなりません。歯を磨くでなく、腕(技術)を磨きましょう。

 口腔細菌と歯磨き
現代人は、生活習慣として、朝、睡眠から目を覚ますと、「口を漱ぎ」、「歯を磨き」「顔を洗う」ことが、歯と口腔の清掃が疾患予防のために重要であることを意識しているからです。その証拠としてDr.Löe,H.(1970)の研究によると、ある集団に歯ブラシを中止すると10日間で全員が歯肉炎になり、歯ブラシを再開すると歯肉炎は消失すると言う実験報告があります。一方、無菌飼育動物の歯肉に機械的刺激(歯肉溝内に異物)を加えても歯肉炎は起こらず、歯槽骨の吸収も無く、ただ機械的刺激による傷が見られたのみであったが、そこに微生物を介在させると歯肉の炎症と歯槽骨の吸収が生じたと言う実験報告(Rovin,Costich、1966)があります。従って、細菌などの微生物の棲息と、その代謝物質が歯周病の元凶であり、さらに機械的・物理的刺激が炎症の消長に関与することが証明されています。
誰の口腔にも、常在菌が生息し、唾液中は約700種ほどの細菌の代謝物質に曝露され、歯面には細菌の塊である歯垢(プラーク)の沈着や歯肉溝内(歯肉縁と歯の間にあるポケット)には分泌液1mg中には約10億以上の細菌が蠢いています。例えば、肛門と口腔の汚染度を比べると、口腔の方が菌種および菌数的にも、遥かに多く、肛門より、腔が汚い場所であると言えます。しかし、通常の場合、歯肉や口腔組織には病気が見られません。これらの細菌は腸内細菌と同様にオーラルフローラ(細菌叢)を形成して、均衡を保って、生体と共生関係にあるからです。 従って、口腔内の全ての細菌を死減(不可能)させるのでなく、歯周病起炎菌や虫歯起炎菌を量的質的に抑え(歯垢の抑制/プラークコントロール)、機械的に歯質や歯周組織を侵害(悪さ)しないようにすることが、一番大切な予防策です。

  歯・口腔の清掃用具
そこで、歯垢を効率よく除去するための道具して歯ブラシと歯磨剤などが考案・開発・販促されていますが、その良し悪しはの評価は曖昧で、何を基準に決めればよいか?・・・、個人好みの域を脱しません。この点、過去に数多くの研究記事はありますが、各人各様の論説で、取留めがなく、歯磨き度、清潔度の比較・数値化が困難のようです。私達は、歯・口の磨き度、清潔度は清爽感と言うべき自己の感覚的満足度やブラッシング時間の満足度で、漠然と理解しているにすぎませんが、大切なことは、口腔内にある凹凸物(歯)を清掃する意識と熱意が重要です。
一般論として、成人の「歯磨き時間」は15~20分は必要と言われますが、朝の平均的「歯磨き」時間は2~3分間が多く、なかには30~50秒間程度だ、と言う人もいます。時間が長ければ良いのではなく、個人に合った「磨き方?」「刷掃用具」の適正化が大切(歯科医による診査・個別指導を受ける)です。特に、睡眠中は唾液の分泌量が減少(特に高齢者)するため口腔の酸性度が高まり、歯質を溶解することが知られていますが、実際、歯を溶かすには24時間以上を要すると実験的に言われていますので、睡眠前の1日1回刷掃法の習慣と励行は、口中の酸性度を抑え、歯の脱灰を防ぐことができます。
近年、食後や入浴中、就眠前に歯ブラシを使う人が多くなり、特に若い人達は口腔の衛生管理に関心が高くなっていますが、歯磨きの回数、方法、時間の長短、刷掃用具、歯磨剤など、それぞれの選択は各人各様の好みで決められているようです。

 歯の汚れ(歯垢・歯石)の付着部位
摂食により、自分自身の歯が汚れる部位を歯科医の指導のもと、歯垢検知液を使い、歯面の汚れを染め出し、着色個所の確認と、その汚れが染まったを部位を、まず自分流の刷掃(ブラッシング)法を行い、自身の刷掃・清掃能を知り、それを自覚して、歯科医師および歯科衛生士の適切な指導を受けて、効率の良い刷掃法の習慣を覚えることをお勧めします。

 歯垢・歯石が付き易い部位は、主に、次の3個所です。
 *赤で示す

1.歯頸部・辺縁歯肉⇒歯周ポケット
スライド1

頬側・舌側の歯頚部・歯間部の歯垢・歯石の沈着を示す

2.歯間部⇒隣接面
スライド2

欠損部の歯間部・歯頸部は歯垢・歯石が沈着易く,取り難い

3.咬合面の溝
スライド3
咬合面の溝(裂溝)にも汚れが付き、虫歯(う蝕)に成り易い

 歯磨きの歴史
私たちは、昔から日常的に歯の汚れを取り、口を清潔にする動作を「歯を磨く」と言う表現で、何の抵抗もなく、慣用句として使っています。
人類の生活は、昔から「歯の汚れ」を取り続けて進化してきました。紀元前1500年頃エジプトのパピルスに、研磨(砂)剤、歯磨剤(dental powder, dental cream)の記載があります。アジヤ諸国では、梵語に歯磨剤をdanta-Sana(ダンタ・シャーナ;淨歯粉)と言い、楊枝(かわ柳/歯木;danta-kasthta ダンタ・カシュタ)とともに淨歯作法として、インド-中国-朝鮮半島をへて、仏教経典の儀式の一つとして、伝えられた記録があります。日本における歯磨きに関する記述は「道聴塗説」大卿良則著の下第15編に“歯磨きのはじまりは寛永二十年丁子屋喜左衛門が朝鮮人の伝を受けてこれを製す”と記載されているのが最も古く、約400年前の徳川家光の時代のことです。実際はもっと古くから人間の生活習慣行動の一つとして、柳の小枝を潰して刷毛状にした楊枝(ブラシ)に、砂や粘土、貝殻片、塩などを石臼で細粉し、それに丁子や竜脳などの香料を混ぜた琢砂(タクサ;昔は玉を磨く意味で、磨き粉の意味)で淨歯が行われていたようです。日本では、「歯磨粉」と呼んで、粗い粉末(研き砂)から、次第に細粒子化がすすみ、現在では、糊状、ペースト状となり、さらに近時は液状化や抗菌成分を加えた薬剤に進化し、研磨材の域から脱したにも拘らず、製造・販売メーカは「歯磨剤」と称して販促しています。この点、業界の意識改革の必要性が指摘されるところです。
一方、歯磨き道具(植毛と把持できる棒状の物)或いは歯の刷掃具(現在一般に使用されている歯ブラシ)は明治以後、近代化が進むとともに材質、形態の合理性、使用感を求めて改良が重ねられてきましたが、その目的は、常に歯面に付着している汚れ、プラーク(歯垢)を人工的(物理的)に取り除くための道具として、基本的には棒状に刷毛を植え付けた歯口清掃用具として、生活必需品の一つとして、プラスチック製の手用歯ブラシを中心に進化を遂げ、近年、刷掃効率をあげるために、歯間部専用の歯間ブラシやフロス(糸楊枝)などが改良され、さらに電動歯ブラシが開発され、それらの多彩な種類が市場を賑しています。
それら歯ブラシの刷毛部(植毛部)は、自然毛(豚毛、馬毛、羊毛、狸毛)が古く、衛生面や吸水性、耐久性などから、近年は、専ら合成ナイロン毛が使われ、植毛の長さ、硬軟性、毛束など、把持部は木製からプラスチック、滑り止めにゴムが付いたものなど、各製造メーカの商業ベースで発案され、多種多様な製品が販売されています。

 何故「歯を磨いてはダメ」か
人間の体で一番硬い組織は、歯冠表面を覆うエナメル質です。モースの硬度計(ダイヤモンドが一番硬い/10を基準)によるとエナメル質は6~7度と言われ、歯根表面の象牙質が4~5度程度(象牙の硬さと同じ)で、それぞれ厚さ(歯根の太さ)には、民族差、個人差があります。
近年の高齢化社会においては、自分の歯を残して、食生活を快適に、健康長寿とともに「生涯歯」の理念が高まり、厚労省提唱の「8020/80歳で20歯」運動が功を奏しているのか、現在、80歳で残存歯20本以上の高齢者が40%を超えたと報告されています。こうした高齢者の「歯磨きの仕方」は、無意識に“横磨き習慣”がクセになっているようです。そこで高齢者の残存歯を診ると歯の変色とともに、程度の差はありますが、100%の状態で歯の付け根部(歯頚部)に楔(くさび)状の欠損が見られ、歯肉が退縮して歯根露出(歯が長く、むき出る)し、虫歯になっていたり、歯がしみたり、食片が止まったりして、老人特有の歯と口元になっています。それに、歯科治療痕として、歯頸部にレジン系充填物の治療痕が散見され、その周囲には虫歯の変色が見られます。
これらの原因は、長年の習慣的「歯磨き」と言う無意識による歯ブラシの“横磨き”動作が、歯肉辺縁や歯根面を機械的摩擦によって、削られ、摩耗して歯質が減少するからです。これを歯ブラシの乱用と解して記述されているが、乱用とは、「力まかせに横磨き」の意味と理解すべきです。他方、歯面を脱灰し、白濁化とともに実質欠損を伴う酸触症がありますが、これは酸を吸う 職場における職業病の一種で、歯の横磨きが原因ではありません。
困った事に、横磨きの悪癖は機械的に歯の中心部にある歯髄腔(血管と神経の存在)に影響して、歯髄狭窄を招き、歯髄炎や知覚過敏を生じ、さらに歯髄壊死、歯根膜炎、根尖性歯周炎などを惹起し、症状の出現(鈍痛、歯がしみるなど)とともに治療を必要とする事態に陥いります。こうした習慣的横磨きが原因で起こる歯髄(神経)症状の治療は難易度が高く、特に、奥歯(複根歯)に対する歯髄治療は治癒率が低く、抜歯を余儀なくされるケースが少なくありません。そのため、患者さんにとっては未治療で、一見無傷な歯を抜くことに抵抗があり、トラブルの原因になります。一方、治療済みで修復冠が被った歯で、無症状であっても横磨きを続けると前歯や奥歯の付け根部が深く削れ、歯が折れ(根破折)、止む無く抜歯される場合があります。

「歯を横磨き」癖の弊害を、
 次にまとめると
①歯肉の退縮
②歯根面の摩耗と楔状欠損
③歯根摩耗部のう蝕(虫歯)
④歯周病の誘発
⑤歯根欠損部に食片残渣が溜まる
⑥開口時(笑顔)の醜さ、審美障害
⑦歯髄の狭窄化
⑧歯髄の知覚障害(過敏および鈍麻)
⑨歯内治療を困難(特に奥歯)にする
⑩加齢とともに摩耗部で歯が破折する
⑪歯根が擦り減り、無症状で、硬い物を
噛んだ時、歯の動揺を来す。

ここに示す症例写真は、高齢者の横磨きによる歯の弊害を示す。
歯と歯肉は、生体の末梢組織で軟組織と硬組織が接合した部位です。言わば、二枚貝の貝殻と貝柱の関係に似ています。、歯と歯肉は常に摂食による機能下で、歯肉の毛細血管は外来刺激や細菌に曝されており、循環(血流)障害を起し易く、その結果、歯肉退縮を招くことになります。
症例:
①78歳 男性
スライド4

②81歳 男性
スライド5

③ 63歳 女性
スライド6

① 、②、③は高齢者の習慣的横磨きによる
歯根面唇側の摩耗を示す

④60歳 女性(審美歯冠修復が施されている)
スライド7
⑤82歳 女性
スライド8

④、⑤は不適合な歯冠修復物。歯肉炎と黒色化した齲蝕と歯肉退縮がみられる。
⑤は修復冠口蓋側に根面の露出と齲蝕がみられる。これは修復冠の辺縁(フイニッシング・ライン)の接合不良。

「横磨き」の弊害は顎骨と歯列弓の
          解剖学的原因もある

スライド9
A. 解剖学的に歯列弓は顎骨の外側に位置し、特に前歯・小臼歯部は歯根の唇側面は骨が菲薄であり、歯周疾患発生とともに、過剰な咬合力や物理的負荷により、骨破因子が働き、歯根露出を招き、さらに歯ブラシの習慣的横磨きにより、歯根の摩耗を助長するものと思われる。
スライド10

B,犬歯、小臼歯部の唇・頬側骨壁の菲薄化により、骨壁の裂開、開窓を生じている
スライド11

C.上顎大臼歯の頬側と口蓋側の根面摩耗(➡)を示す。
スライド12
D,同✕線像は複根歯の歯髄腔の狭窄。

「歯を磨く」用語は
  「歯を横磨き」する悪癖を生む

日本では昔から、歯の汚れや歯垢を取り、口腔を清潔にする行動表現を「歯を磨く」と言います。諸外国では「歯を磨く」とは言いません。欧米では「歯をブラッシング/ Tooth brushing又はTooth clean」、ドイツではZähneputzen/ツェーネ プッツェン(歯の清掃・清拭)、フランスはBrossen ä dentis,イタリアはSpazzolino  da  dentiと表現し、インドでは「淨歯」,中国で 「刷牙」と言い、「歯を清掃する」、「歯のブラッシング」の意味合いが強い表現である。我が国や韓国では、何故か「歯を磨く」と言う言葉が定着しており、歯の健康と口腔衛生を意識しつつも、ひたすら毎日、無意識に歯をゴシゴシと擦り、削る、横磨きの習癖を続け、なかには、横磨きは悪いとブラッシング指導を受けても一旦身に付いた横磨きの悪癖は止むことはないようです。その結果、加齢とともに歯は摩耗して、種々な障害を招くことになります。 高齢社会における今日、老若男女、全ての有歯者は「歯の横磨き」の弊害を認識し、「歯(は)ブラッ歯(し)ing」に努め、健康長寿とともに健康・咬歯を志向した意識改革と歯・歯肉を侵害しない刷掃用具を開発する必要がある。

 歯ブラシ「歯の刷掃用具」の
       植毛・毛束の改良が必要
歯ブラシは、歯面、歯肉を刷掃して、歯垢や食片残差を取り、口腔を清潔する道具です。各自の歯列に適した植毛と毛束、その形態と配列が効率よく、清掃ができて歯や歯肉に弊害のない素材が求められます。近年、歯列矯治療中の専用ブラシや多種類の歯間ブラシが開発され、さらに身体的障害がある方々のために電動歯ブラシが販売されていますが、まず基本的刷掃用具(朝晩使う通常ブラシとして)、為害性の少ない効率の良い専用歯ブラシが必要です。
しかし現代人のスピード化した日常生活のなかでは、まず毎朝の歯ブラシ・刷掃を最大公約数的に有効よく、傷害なく約1分前後(成人の大多数の人の刷掃時間)程度で仕上げる成人用(シニヤー/高齢者)の刷掃道具が必要です。なお、歯間ブラシやフロスは毎朝目覚めに使用する人は少なく、多くは食後や休息時に使用している。
従って、毎朝励行される通常歯ブラシの使い方は 多少の横磨き動作があっても歯面を侵害しない毛束・植毛列を歯面凹凸に対応する緩衝列(毛束が歯面に強く当たらない)を設け、シンプルで、効率の良い毛束列と毛質および持ち易い把持部からなり、複雑なブラッシングの原則を強いることなく、効果的なプラークコントロール(細菌の活動抑制)が出来るものでなければなりません。
 その要件:
①毛束の横動き動作でも、根面への加圧が少なく、ソフトタッチで、歯を摩耗しない
②歯間部に束毛が入りやすい
③歯の根元(歯肉縁・歯肉ポケット)に届く
④奥歯の遠心部、孤立歯の歯周縁に届く
⑤毛先が細く、しなやかである
⑥毛束の長さは12~13mmが適切である
⑦毛束の根元に付いた汚れが取れやすいこと
⑧把持部は持ち易く、棒状で違和感がない
⑨抗菌性素材で、清潔に保ち易いこと
以上が、日常的に朝の歯面清掃・刷掃用具として、最大公約数的に望ましい要件であると思われる。

 適正な歯ブラシの特徴と形態 (注:実用新案登録中)
歯の清掃用具(刷掃具)は、歯面や歯肉に侵害を与えず、短時間で、簡単に、効率良く、歯の汚れ、歯垢が除去できなければなりません。そのキーポイントは歯面(凹凸)に対する毛束列に緩衝帯を作ること。
A type : 形態(形と毛束列)
● 毛束   ✕:緩衝帯(毛束なし)
毛束列;
前方より横2列-3列-4列-✕-4列-4列―✕-4列-3列-2列  縦列毛束8列、中心部x6列。

前面
スライド13

側面
スライド14

B type:形態(形と毛束列)
●毛束    ✕緩衝帯(毛束なし)
毛束列:
先端より 1列—2列-2列-2列-2列—2列
-2列 -1列 、縦8列、✕8列

毛束面
スライド15

側面
スライド16

 適正な歯ブラシの使用法
前事項で示した新規開発した歯ブラシの最大の特徴は刷毛列に緩衝列(毛束の無い列)を設けてあることです。従って、歯面・歯肉に対しソフトにタッチすることが出来、使用者は自分の歯面の汚れ部位を意識しながら、合目的的に刷掃(ブラッシング)を励行することにより、機械的に歯を侵害しないこと、歯垢・歯石の沈着を防ぎ、快適な食生活を維持し、生涯歯とともに健康長寿を全うすることを志向する。
1.臼歯部:a.最後臼歯遠心面、歯頸部・歯周ポケット、歯間部、咬合面などへ、毛束の到達性は極めて良好である。
スライド17

2.前歯部:毛束を切歯先端から、当てることにより
唇・舌的歯頸部・歯周ポケットへの刷掃が
的確に行える
スライド18

3.矯正治療中:矯正装置の刷掃と歯間部、
歯周へ毛束のアプローチが的確に行える
スライド19

4.インプラント治療中
①連結人工歯冠・歯間部、歯周へ毛束のアプローチは極めて良好である
スライド20

②磁性アタチメントやコーヌス冠、ドルダーバー症例に対する毛束の当て方
スライド21

投稿者:
• 2016/ 02/ 10 (水)


平成28年1月10日
日本歯周外科学会
会長 伊藤輝夫
 学会員 各位
謹賀新年
今年こそ歯科界の沈滞ムードを一掃したいですね。 
 先生方にはご健やかに、新年をお迎えになられた事と拝察申しあげます。
昨年1月16日に「歯科医師の資質向上等に関する検討会」の第1回会議が厚労省主導で開かれた事をご存じですか。この検討会は厚労省の医政局長、大臣官房審議官を招き、歯科部門から和田医療専門官、鳥山保健課長を主催者として、全国から開業医、歯科大学学長、歯科医師会長、医師会役員、新聞社役員。法律事務所長、人口問題研究所長の多士済々の面々で、諸々の状況を踏まえ、根本的な問題として、次の3点について、即ち①歯科医師需給問題 ②歯科医療の専門性 ③女性歯科医師に関するものでした。
 実は平成18年12月にも厚労省医政局歯科保健課が前述と同様の「今後の歯科保健医療と歯科医師の資質向上に関する検討会」の中間報告をまとめている。これら行政の動きは年々の歯科医療に対する患者の選択の尊重性や保健医療に求められる水準の高まりを背景とした歯科医師の資質を懸念したもので、以下に、私見をはさみながら概要を述べます。
 歯科医師の資質
 大学歯学部に入学する学生の資質の低下が指摘されて久しい。重視すべき資質は、コミュニケーション能力および歯学部入学時における一定以上の学力を有することが求められるべきあるが、卒前教育の場において、指導教官は、学生が医療人として、卒後において良識ある社会人として信頼性と安全で適切な歯科医療を行うための教育指導を行うことが重要である。医師たる者の資質は、医師・歯科医師の多寡や大学入試、国試の難易性の論議だけでは向上はありえない。従って、医師・歯科医師を養成する大学は職能教育の場であることを指導教官は自覚すべきである。しかしながら近年、卒前(大学)の臨床実習は、基本的技術実習の時間が減少傾向にあり、カリキュラムの貧弱化は卒後における歯科医師の資質の向上に影響を及ぼすものであり、卒後は、さらに医療人として生涯研修の理念を自覚して、日進月歩の医療水準に準ずる資質の向上に努めるべきであるが、いずれの学会、研修会の年次会合の会員参加者は20%前後に過ぎないと言われている。言わば活動しない名目学会員である。今後、すべての歯科医師が倫理および知識、技能について、積極的、継続的に研修を行う必要があり、その結果の評価も求められている。
 1.歯科医師の需給
 歯科医師の新規参入は、昭和61年の検討会報告後、入学定員の20%削減が実現され、さらに平成10年度に10%程度の削減が提言されたが、
1,7%に留まっている。平成18年8月に文科省および厚労省の両大臣による確認書を受けて、次のように歯科医師の需給問題が予測された。
 a受診患者数:歯科診療所の患者数は、全体として横ばい傾向にある。歯科医師数は毎年1,500人程度のペースで増加しており、歯科医師1人当たりの患者数が減少し、歯科医師の過剰感は益々強くなている。
 歯科診療所施設数は平成25年68、701件(廃止1、746件、休止398件、計2、144件)直近の平成26年10月は68,592件 (開設1、910件、再開123件、計2、033件)前年比で微減している。歯科医師数は平成24末で、総数10万人余になっている。これは人口10万人当たり、歯科医師は80人を超えている。なお、歯科は多くが診療所開設者であり、女性歯科医師は勤務者が多数である。医科は男女とも病院勤務者が多数である。
 b歯科医師の過剰問題:歯科医師の専門職としての魅力の低下とともに歯学部入学者の質の低下を招き、国試合格率(平成26年の合格率約63%)や臨床研修の場の減少と個人経営開設者が大多数の歯科診療所における勤務医の長期的従事条件が悪化し、競争社会化が商業化を生み、歯科医師のモラルの低下を招くことになる。医学的な基本的技能に未熟な歯科医師は必要とする観血的外科手術から逃避して、リスクのない外面的歯冠修復歯科治療に終始し、経営上、保険給付外診療を主体とした医療ビジネスに感化され、開業請負業者の誘いと、集患策(宣伝・広告、HPの活用)に翻弄し、さらに新規開業の際、最新高額歯科医療機器の過剰設備投資による高額治療費の早期回収を患者に委ねる(自費率をあげる)結果、個々の患者が期待する歯科医療水準を技術的に維持できず、患者の満足度の低下と共に不信感を招いている。
 c.高齢社会の歯科医療:高齢者の歯科医療の現状は低調で、在宅療養支援歯科診療所の届出は10%に満たない状況である。過去(1970年代まで)は先進国中で最も低い高齢化率の低い国であったので、当時は専ら健常者対応型の歯科医療が行われ、歯科医師は過剰気味であった。高齢社会と化した現在、高齢者対応型歯科医療に対応できる歯科医師は不足していると言える。従って、新規開業の若手歯科医師の多くは、高齢者特有の全身的変化や心理的変貌に伴う口腔機能および咬合力の低下に対応する診断と技能(無歯顎患者の総義歯作成やインプラント治療)は決して十分であるとは言えない。
歯科医師需給問題の日歯会の見解
 日歯会は平成26年10月に「歯科医師需給問題の経緯と見解」を纏めている。将来的に、どれほどの歯科医師数が望ましいか・・・? これを数値化している。
 ①現在の歯科医師数, ②1日当たりの患者数、③国家試験合格者数の3点から、バランスの取れた適正歯科医師数は81、641名と数値化された。これは2,000名前後の国家試験合格者と人口推移を踏まえ、将来的(20年後)に歯科医師(新規を含め)数は人口10万人当たり80,409名が数値化されたと述べている。また、歯科医師数は75、000名位が適正であるとの見解をしめしている。
政策局歯科保健課の今後の方針
 平成18年度の歯科医師数の伸びをゼロとし、新規参入歯科医師の90%が稼働すると仮定した場合、新規歯科医師は約1、200人程度とする必要がある。同年度の歯学部募集人員2,667人、同年国試合格者(2、673人)の45%に相当する。従って、以下のように新規歯科医師数の削減を図る。
 ①18歳人口の減少を考慮して、積極的な削減数を早期実現のため、各大学の自主的、前向きの取り組みに期待する。
 ②国試については、平成19年の国試制度改善検討会(4年ごと)において、資質向上の観点から合格基準を引き上げ、出題内容などについて幅広く検討する。
今後の歯科保健医療の予測
 歯学部および医学部口腔外科教授、都道府県歯科医師会長を対象としたアンケート調査(平成17年と27年)の結果を次に示す。
*歯科大学の教育担当者は、年々の入学者の学力低下を指摘している。
*需要が増加する分野:予防歯科(歯科疾患の予防、管理)、インプラント治
 療、高齢者対応歯科、審美修復などを挙げている。これに伴う技術研究の
 充実を強調している。
*需要が減少する分野:小児歯科、保存、補綴分野を挙げている。その理由
 としては、少子化、予防の成果、インプラント治療への移行
*今後10~20年間に歯科保健医療に必要性の高い分野:検査および
 診断、再生医療、歯科疾患予防のための健康・栄養指導、在宅訪問およ
 び高齢者特有の歯科治療の充実が急務である。
*全身疾患への予防と進行防止、全身の健康保持増進への寄与:歯周病と
 全身との関連性や誤嚥性肺炎の予防などについては国民への啓発、マス
 メディアの活用および医科との連携、さらなる基礎研究の充実。食生活
 における口腔機能の重要性、健康寿命への寄与、アンチエージング、
 無呼吸症候群などへの対応を挙げている。
*現在の超高齢化社会は100歳以上の高齢者が6万人を超えたと言われ、
 今後、後期高齢者の延びが、約30年は続くと予測されている。
*さらに2025年問題が待ち構えている。いわゆる「団魂の世代/第1次ベビーブーム;1947年~1949年の3年間の生まれ」の方々が75歳になるのが、2025年です。国民の4人に1人(約2、300万余)が後期高齢者となり、医療・介護サービスの需要、年金の受給者等が急増することが確実視されています。こうした迫りくる超高齢社会に対して、国は社会保障の財務政策に躍起であるが、歯科医療政策については、末梢事案として等閑視されている。

1.疾病変化に伴う需給問題 
*小児齲蝕(3歳児)は現在、1980年代の約3分に1程度まで罹患率が減少。
*8020の達成者は平成23年度調査では、20歯以上保有達成者が
 40.2% になっている。
*従来(1980年頃まで)は、齲蝕の充填、補綴および歯周病に対し抜歯・
 義歯などの形態修復型・歯科医療完結型の治療が主体であったが、歯科
 疾患構造の変化および超高齢社会は今後、数十年は続くと予測されるので、
数年後には口腔機能の回復維持を主体とした歯科医療機関が、医科医療機関および介護施設、地域包括支援センターなどとの連携を図り、地域完結
型医療の中に歯科医療体制が組み込まれるのではないかと思われる。
*推計患者数の年次推移(3年ごとの調査)によると、平成23年は65歳以上の割合が35.9%で、目立った増加傾向にあり、今後さらにる高齢患者の増加に伴う歯科医療体制および歯科医師の対応が論点になる。
*高齢者の増加は全身的有病者の増加を意味する。従って、歯科治療の難度が高まり、全身的リスクを伴う対応が増大するため、歯牙を中心とした歯科治療のみならず、口腔機能と食事・栄養管理、全身疾患を背景とした包括的歯科医療論議が急務である。
2.歯科医療の専門性
 歯科が医科と大きく異なる点は、単に臓器、部位的に分けられているのでなく、治療内容によって治療体系や学問体系が細分化されている点である。従来、歯科は専門分野として、教育、研究、診療が特化しており、局所的専門性は高いが、近年の社会構造の変化に伴う医療の高度化のなかで、過去の歯科の専門性が脆弱化してきたことから、歯科をさらに細分化して専門分野を作るべく各学会が認定制度をもうけているが、現況は専門医資格証書を発行しているが、実地技能認定がなされてないので、専門医としての意味をなしていない。今後、高齢者、障害者の増加に伴い専門性と共に全身性疾患の診断および管理の必要性が高まると思われる。この点、近年の新規歯科医師の高齢患者に対する診断と対応能力の低下を懸念せざるを得ない。
 これは歯科だけの問題でなく,医科においても「専門バカ」に陥る傾向にあり、現在、学会認定医・専門医と言われる人達に対し、例えば、耳鼻咽喉科、眼科、脳神経外科などの19の基本領域専門医修得者に、新たにSubspecialty(副専門領域の資格)を備える必要性から、循環器、消化器、呼吸器などの専門医資格修得や病態栄養学知識習得の道が作られている。近年、医科(大学病院)においては、単に内科、外科の標榜は無くなる傾向にあり、内科は循環器、呼吸器、消化器、腎臓などに、外科は心臓外科、脳外科、胸部外科などの専門表示される傾向にある。一方、総合診療医の必要性とともに、複数の医師によるチーム医療が充実されつつある。ここで言う専門医とは「それぞれの診療領域においてエビデンスに基づいた十分な知識と経験を持ち、患者から信頼される標準的な医療が提供できる医師」で、特殊な技能(例えば、神の手とか、スーパードクター)を指すのではなく、医学・歯学の基本的技術の研鑽と臓器疾患の治療力を向上し、社会構造の変化(人間学)を適切に医療に実践することができる医師・歯科医師が、各医療体制の名誉ある専門医であると言える。

 3.女性歯科医師の問題
 近年、歯学部入学者に占める女性の数、割合の推移をみると、昭和40~50年代には約10%台であったが、経年的に年齢別比率を見ると30歳代では34%、20歳代では約40%に、若い女性歯科医師の増加傾向の推移がみらる。なお、ドイツでも近年、女性歯科医師は増加傾向にあり、70%に達しているらしい。そこで、女性歯科医師の就業状況、キャリアパスについて関心が高まっている。女性特有の問題点としては、結婚(戸籍上など手続き)、出産、育児などに伴う離職、復職を想定しながら、女性歯科医師の有効な活躍の場が求められている。因みに、女性医師は皮膚科、眼科、基礎研究系などに携わる方が多く、女性歯科医師は歯周病、歯列矯正、小児歯科などに関心が高い傾向にあり、職能的にcureより、careの分野で、有能な方々が多いように思われる。今後、女性歯科医師の個性を生かした貢献性と有効な医療現場を開拓する必要がある。
 以上、昨年度における厚労省が開催した「歯科医師の資質向上等に関する検討会」の要旨を記述しました。ご参考になれば幸甚です。
何か、ご質問、ご意見がありましたら、ご一報とともに教示賜りたいと存じます。

投稿者:
• 2014/ 10/ 12 (日)

第32回(平成26年)日本歯周外科学会・名古屋大会開催について
投稿者: 伊藤輝夫 会長  • 2014/10/13
期日:平成26年12月06日(土)~07日(日)9:30~17:00
会場:第1日目:栄ガスビル4階ホール(401号)講演会場
   第2日目:(株)モリタ名古屋支店 実習会場
シンポジューム
メインテーマ「上・下無歯顎におけるインプラント治療の検証」
-総義歯からインプラント治療の患者満足度を上げる秘訣を探るー
「開催趣旨」
 我が国のインプラント臨床は,約40年以上の変遷を経て瞠目の発展を遂げ、安全・安心を謳い文句に多くの患者さんの信頼を獲得してきた実績は十分に評価できる。特にインプラント治療の予後分析によると、少数歯欠損のインプラント埋入後の機能維持は下顎では10年以上、上顎は7~8年、それ以上の良好な予後を保っている多くの症例が散見できることは近代歯科医療の大きな功績と言える。しかし、世はまさに高齢化社会であり、多くの高齢者は多数歯欠損、あるいは無歯顎(総義歯の使用)である。健康老人は、さらなる健康長寿の源は食にありとして、食域(食育・飽食)の多様化とともに健全な食生活を司る「噛む喜び」を得ることが高齢者にとって、生きがい(生命の泉)であり、身体的健康を育み、脳機能を活性化して痴呆症の予防に効果を上げている。従って、インプラント治療を希望する高齢者は少なくないが、新聞紙上で報じられる不祥事の発生に不安と心配を示している。確かに、こうした高齢者に対するインプラント治療による口腔機能回復は多くの問題点を包含している。即ち、高齢者の無歯顎は、一般成人の少数歯欠損の場合とは、同一線上のSolutionでは患者満足を得る治療成果が得られないことが多い。そこで直近する不祥事を仄聞するにつけ、我々インプラント臨床医(インプラント治療を行う歯科医師)は失敗例やトラブル症例に真摯に対応するとともに、十分な検証が必要である。我が歯科界の現況は長引く閉塞感の脱却を模索中のなか、インプラント治療の反省期に這入ったと言える。特記すべき事は、インプラント治療後の患者は誰しも、インプラントは生涯歯(墓場まで使える)の役目を果たすことを期待しており、自らもインプラントを長持ちさせるために、主治医の指導を守り、日々の口腔清掃等に努力している方々は少なくないが、高齢化に伴う身体的変化のなかで有限(インプラントにも寿命がある)であることも知って頂くことも必要である。そしてインプラントの長期使用により、何等かの原因でインプラントの脱落が生じた後の問題は重大で、多大な顎骨吸収(欠損)を伴っているこが常であり、その後の口腔機能の回復を難かしくしている。即ち、適正なインプラント治療であっても、長期的機能推移の結果(予後の結果)として、顎骨の吸収・喪失をもたらし、再インプラント治療や適切な補綴治療の選択を難しくし、高齢期になって口腔機能の望ましい回復を奪う結果になる。今後、さらなる超高齢化社会が進むことにより、インプラント患者の口腔機能の衰えの時期を迎えることになるであろう。我々臨床医は、そろそろ「Post-Implant/インプラント後」のSolutionを考えておくべきでしょう。
 そもそもインプラント治療は、臨床歯科学の学識と技術に精通し、高水準の治療遂行能力が必要な分野であるにも関わらずインプラント治療に対するVariation Controle Technique(VCT) に不慣れ(未熟)な開業医や勤務医による術前診断で Serious   caseにも拘らず、インプラント埋入手術の外科的処置の不備(無理に)のまま敢行して、 Primary stability /Osseointegrationの獲得失敗による埋入後即脱落を招き、患者さんの失望を招いたり、他方、高度のインプラント治療水準を期待して大学病院や総合病院を紹介され、そこでインプラント埋入手術を受けた後にインプラントの脱落などトラブルを生じ、骨欠損を惹起した無歯顎患者が、義歯の作製は「開業医で作ってもらいなさい」と言われ、開業医へ来院するケースも少なくない。言わずもがな、インプラント埋入手術担当者の責任として、インプラント埋入の失敗(埋入後約5~6ヵ月で判断できる)により、骨欠損を招いた場合、骨の造成術を施し、再インプラントを施術して、インプラント治療を完成させるか、あるいは義歯等補綴的治療による適切(患者満足度を得る)な口腔機能の回復などを行うべき責任がある。
 ただし、インプラント治療の予後において、治療後の患者の高齢化(身体的変化)に伴ない、良く噛めたインプラントが、定期診査を受ける、受けない(実は定期診査に来ない患者は多い)にも関わらず、長期間(7~8年以上)機能し、何等かの原因でインプラントに症状が出現したり、破損などの不具合が生じても、患者の満足度と信頼が得られている場合には、例えインプラントが抜けても、トラブルとはならない事が多いので、必要な後続治療の計画を順調に進めやすい。                       
 元来、医療行為と言うものは、少なからず合併症の発生や不確定因子などが付きまとう。インプラント治療を行う際も同様である。問題は十分な術前説明と「事が起きた時に」如何に対応できるかにより術者の能力と品格が問われる。そこで手術行為(インプラント埋入術)で生じるパラメーターに対応できない歯科医師はインプラント治療に慎重(安易な集患宣伝を慎むべき)である。特にインプラント治療を試みる開業医や若手勤務医は、自らのインプラント治療の経験値と対応能力を知り、患者を利する方策を選択する決断が賢明な策である。
 因みに、独立行政法人(国民生活センター)の報道発表資料(平成23年度)によると「インプラント治療により患者が不利益を受けた場合」、こうした事象は「歯科医師がインプラント治療により患者に“危害”を加えた行為」として明言している。あたかも術者を手術の結果次第で、患者に“危害”を加えた犯罪者の如き表現である。本学会としては医療の本質を知らずして、医療行為の結果で「危害」を加えたと表現する行政当局の稚拙さは、医療を冒涜する言動であり、憤慨を禁じえない。今後、歯科界は「インプラント治療の結果次第で、“危害を加えた“と表現する行政当局に対し、断固、抗議と論争を展開すべきである。
 本学会は、インプラント臨床の現場で悩める開業医の意見交換の場です。 この度の第32回日本歯周外科学会・名古屋大会を機会に、近年のインプラント治療に纏わる不祥事を真摯に受け止め、将来のインプラント臨床の信頼と発展を目指し、トラブルの多い無歯顎・多数歯欠損に対するインプラントの諸問題を洗い出し、インプラント臨床医の責務として、反省とともにインプラント治療の多彩なパラメーターを検証し、今後のインプラント治療の安全・安心を確固たるものにするために十分なクロストークして頂きたいと念願する次第です。
 インプラント治療に関心のある開業医の先生方は、是非ともご参加下さい。
カテゴリー: お知らせ | コメントはありません

投稿者:
• 2014/ 09/ 03 (水)

第32回(平成26年)日本歯周外科学会・名古屋大会開催について
投稿者: 伊藤輝夫 会長  • 2014/ 09/21
期日:平成26年12月06日(土)~07日(日)9:30~17:00
会場:第1日目:栄ガスビル4階ホール(401号)講演会場
   第2日目:(株)モリタ名古屋支店 実習会場
シンポジューム
メインテーマ「上・下無歯顎におけるインプラント治療の検証」
-総義歯からインプラント治療の患者満足度を上げる秘訣を探るー
「開催趣旨」
 我が国のインプラント臨床は,約40年以上の変遷を経て瞠目の発展を遂げ、安全・安心を謳い文句に多くの患者さんの信頼を獲得してきた実績は十分に評価できる。特にインプラント治療の予後分析によると、少数歯欠損のインプラント埋入後の機能維持は下顎では10年以上、上顎は7~8年、それ以上の良好な予後を保っている多くの症例が散見できることは近代歯科医療の大きな功績と言える。しかし、世はまさに高齢化社会であり、多くの高齢者は多数歯欠損、あるいは無歯顎(総義歯の使用)である。健康老人は、さらなる健康長寿の源は食にありとして、食域(食育・飽食)の多様化とともに健全な食生活を司る「噛む喜び」を得ることが高齢者にとって、生きがい(生命の泉)であり、身体的健康を育み、脳機能を活性化して痴呆症の予防に効果を上げている。従って、インプラント治療を希望する高齢者は少なくないが、新聞紙上で報じられる不祥事の発生に不安と心配を示している。確かに、こうした高齢者に対するインプラント治療による口腔機能回復は多くの問題点を包含している。即ち、高齢者の無歯顎は、一般成人の少数歯欠損の場合とは、同一線上のSolutionでは患者満足を得る治療成果が得られないことが多い。そこで直近する不祥事を仄聞するにつけ、我々インプラント臨床医(インプラント治療を行う歯科医師)は失敗例やトラブル症例に真摯に対応するとともに、十分な検証が必要である。我が歯科界の現況は長引く閉塞感の脱却を模索中のなか、インプラント治療の反省期に這入ったと言える。特記すべき事は、インプラント治療後の患者は誰しも、インプラントは生涯歯(墓場まで使える)の役目を果たすことを期待しており、自らもインプラントを長持ちさせるために、主治医の指導を守り、日々の口腔清掃等に努力している方々は少なくないが、高齢化に伴う身体的変化のなかで有限(インプラントにも寿命がある)であることも知って頂くことも必要である。そしてインプラントの長期使用により、何等かの原因でインプラントの脱落が生じた後の問題は重大で、多大な顎骨吸収(欠損)を伴っているこが常であり、その後の口腔機能の回復を難かしくしている。即ち、適正なインプラント治療の長期的予後の結果、骨が喪失した顎骨に再インプラント治療や適切な補綴治療の選択を不可能にし、高齢期になって口腔機能の回復を奪う結果をもたらすことになる。
そもそもインプラント治療は、臨床歯科学の学識と技術に精通し、高水準の治療遂行能力が必要な分野であるにも関わらずインプラント治療に対するVariation Controle Technique(VCT)に不慣れ(未熟)な開業医や勤務医による術前診断でSerious caseにも拘らず、インプラント埋入手術の外科的処置の不備(無理に)のまま敢行して、オステオインテグレーションの獲得失敗による早期脱落を招き、骨喪失を生じたり、他方、高度のインプラント治療レベルを期待して大学病院や総合病院でインプラント埋入手術を受けた後に、骨欠損を惹起した無歯顎患者が、義歯は「開業医で作ってもらいなさい」と言われ、開業医へ来院するケースも少なくない。言わずもがな、インプラント埋入手術担当者の責任として、インプラント埋入の失敗(埋入後約5~6ヵ月で判断できる)により、骨欠損を招いた場合、骨を修復し、再インプラントを施術して、インプラント治療を完成させるか、あるいは義歯等補綴的治療による適切(患者満足度を得る)口腔機能回復を行うべきである。
 ただし、インプラント治療後高齢化に伴ない7~8年以上長持ちして、良く噛めたインプラントが、定期診査を受ける、受けない(実は定期診査に来ない患者は多い)にも関わらず、何等かの原因でインプラントに不具合が生じても、患者の満足度と信頼が得られている場合にはトラブルとはならないので、必要な後続治療の計画を順調に進めやすい。                       
 そもそも、医療行為と言うものは、少なからず不確定因子が付きまとう。インプラント治療を行う際も同様である。問題は「事が起きた時に」如何に対応できるかにより術者の能力と品格が問われる。そこで手術行為(インプラント埋入術)で生じるパラメーターに対応できない歯科医師はインプラント治療に慎重(安易に宣伝集患を慎むべき)であるべきである。特にインプラント治療を試みる開業医や若手勤務医は、自らのインプラント治療の経験値と対応能力を知り、患者を利する方策を選択する決断が賢明な策である。
 因みに、独立行政法人(国民生活センター)の報道発表資料(平成23年度)によると「インプラント治療により患者が不利益を受けた場合」、こうした事象は「歯科医師がインプラント治療により患者に“危害”を加えた行為」として明言している。あたかも術者を手術の結果次第で、患者に“危害”を加えた犯罪者の如き表現である。本学会としては医療の本質を知らずして、医療行為の結果で「危害」を加えたと表現する行政当局の稚拙さは、医療を冒涜する言動であり、憤慨を禁じえない。今後、歯科界は「インプラント治療の結果次第で、“危害を加えた“と表現する行政当局に対し、断固、抗議と論争を展開すべきである。
 本学会は、インプラント臨床の現場で悩める開業医の意見交換の場です。この度の第32回日本歯周外科学会・名古屋大会を機会に、近年のインプラント治療に纏わる不祥事を真摯に受け止め、将来のインプラント臨床の信頼と発展を目指し、トラブルの多い無歯顎・多数歯欠損に対するインプラントの諸問題を洗い出し、インプラント臨床医の責務として、反省とともにインプラント治療の多彩なパラメーターを検証し、今後のインプラント治療の安全・安心を確固たるものにするために十分なクロストークして頂きたいと念願する。
 インプラント治療に関心のある開業医の先生方は、是非ともご参加下さい。
カテゴリー: お知らせ | コメントはありません

 

投稿者:
• 2014/ 01/ 06 (月)

講演会場は江坂東急インの優雅な大宴会場にて、5名の演者により有意義な講演が行われました。さらに、2日目の実技実習は定員を上回る盛況で、和気あいあいの雰囲気の中、実のある実践的研修が行われました。会員の方で講演抄録集のご希望の方は事務局まで、ご一報下さい。なお、平成26年度(第32回)日本歯周外科学会は京都(京都モリタ予定)を予定しております。

投稿者:
• 2013/ 07/ 10 (水)

昨今の歯科医療現場を取り巻く環境は厳しく、超高齢化社会、政経グローバル化推移の背景ととに、高額な最新医療機器の開発に伴う疾病療養の高度化と高額化の一方、社会保障制度下の歯科保健制度は財源の枯渇を理由に、多くの医療現場では退廃した前時代的治療を強いる風潮にあり、善良な歯科医や若い歯科医師の研修意欲を削ぎ、本来歯科医療は外科学的知識と技量の研鑽を旨とすべきであるが、昨今の臨床医は外科手術の必要とする病変に対して姑息的処置に終始し、逃避的処置で患者を愚弄したり、等閑視することにより、病状の悪化をあたかも患者自身の責任にする不勉強の歯科保険医が多くなっている。その証拠に歯科保険給付の歯周外科手術件数は過去10年間の処置件数は劇減しており、P急発症状のもとに姑息的処置のみで、歯の延命治療が積極的に行われなくなったが、一方、人工歯根療法の普及に伴い、骨吸収のみられる歯周病では、保険給付治療で手間暇かけることで、高額保険給付請求の結果、保健指導の対象になるよりも早期抜歯を行い、安全にインプラント治療が行えることが患者にとっても臨床歯科医にとっても、国の財政難の保険制度にとっても良法であると言えるか?