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• 2017/ 06/ 06 (火)

  歯を磨いてはダメ!
  -歯磨きを総括する-
 歯は磨くものではありません。ゴシゴシと擦っても、光る前に歯が削れて減ります。「歯を磨く」と言う生活用語は、歯の汚れを取り、歯の健康のための刷掃動作を「歯を磨く」と表現した我が国特有の慣用句として使っている。
子供の頃から朝起きると、親から「歯を磨け」、「歯を磨いてからご飯にしましょう」と言われてきました。思えば、4~50年前は、歯ブラシに歯磨き粉・砂(研磨剤)を付けて、何の抵抗もなく虫歯予防のため、ひたすら3・3・3方式(一日3回食後3分以内に3分間歯磨き)で、歯を磨くことが乳歯から永久歯萌出にいたる小中学校の保健指導に組み入れられ、歯を磨け、磨け!・・・運動で、「歯の健康優良児」が育ってきました。この方式の根拠は1943年Stephanが提唱したもので、食事後、歯面に付着した食べカス・糖質が口腔内細菌の養分となり、分泌物として酸を排泄して、歯の表層(エナメル質)の汚染停滞部の酸性度(PH5.4以上)が高まると、そこから脱灰(虫歯)が始まる。これが30分以上続くと、多数の常在細菌の活動と相まって、口腔内は不潔となり、唾液の感染防禦能の低下など、全身的背景のもとに口腔環境の悪化を招き、細菌の死骸や唾液成分などが付着し、バイオフィルム(微生物の膜)・歯垢・歯石などの堆積汚染物として停滞することにより、単純な歯肉炎から、歯槽骨の吸収を伴う歯周炎に移行し、さらなる悪化を招きます。従って、3・3・3方式歯の刷掃法は、妥当と言えますが、この方法を習慣的に励行している現代人は極めて少数と思われます。

 臨床歯科医の責務
次の2点に尽きると思う
1.適正な歯科治療
2.口腔清掃法の指導と患者の自覚
人は成長し、加齢とともに食性・食域習慣の負の影響を受けます。かって、歯は摂食時、線維性食材による自然清掃作用が信じられていました。1967年Èmslie,および1970年Ⅼöeらの実験で、適正な歯列弓(歯と歯の接触点)、個々の歯の形・豊隆、歯肉の形ちが咀嚼運動中、粉砕された食片(塊)が歯面と歯肉上を止まることなく流動的(Spillway)であれば、食材による自浄性が期待できるが、成人歯列には歯科治療痕(充填、歯冠修復冠)が見られることがあり、その密着性の不良部位や隠蔽された箇所は食物による自然浄化作用が及ばないことが証明されています。
従って、人の食生活において、歯の汚れ、歯垢や歯石の沈着は必然的で、自らの刷掃・清掃を励行するか、歯科医療担当者による人為的除去(機械的、化学的清掃)に頼るほかありません。さらに人は生活を重ねるとともに、やがて身体的変化は歯や口腔に及び、虫歯や歯肉炎の発症、そして歯科治療の機会が多くなると、意外なことに、医原性疾患が生じる可能性を否定できません。多くの歯科治療の中で、総義歯の作製以外、良きにつけ、悪しきにつけ、歯周組織に影響を与えることになりますが、幸いにも、口腔は1日約1500mlの唾液が分泌されており、咀嚼作用による食塊形成とともに消化酵素による機能を高め、その流れを良くして食物中の酸を中和したり、口の中の汚れを洗い流してくれます。このような唾液による生理的防禦機構の存在で、治療的(人為的)刺激や変化に比較的順応性を有していると言えます。しかし、時によって、歯周組織の認容能を脱した刺激や変化は歯周組織の侵襲要因となります。あえて指摘するならば、虫歯が進行して、歯が大きく崩壊すると、病的歯質を削り、歯冠を人工的に修復します。この際、生体力学的材料に依存する歯科医療は技術的に精密誤差が生じ易く、永続的に口腔細菌の侵襲を受けることになるので、治療後(不良補綴物)の隠蔽部や粗雑面の汚れに対する刷掃と清掃の低下は虫歯の再発、歯周病の再炎を招く。問題は歯科治療で、歯垢・歯石沈着を助長したり、それらの除去を困難にする治療完了後の状況は誤った歯科医療の誹りを免れません。いずれの歯科治療後の歯や歯周形態は歯ブラシシングの効率の良い自浄性の付与であるべきです。したがって、大切なことは機能性と審美性とともに、歯ブラシの刷掃効率の高かい歯科治療が良質な治療であることを知っておくべきす。

 歯の健康は人生を快適にする
現代では、歯の健康と微笑み、口元もとの美しさが心身ともに、幸せな社会生活を育む源であることを知り、さらに、虫歯や歯周病が全身病との関わりや、歯・口の醜さ、口臭などが、対人関係を損ね、人格すら疑がわれ兼ねないことに気づくでしょう。
動物は「歯が無くなると死を悟る・・・」このことを我が家のペットから教えられたことでしょう。動物は歯を磨きません。口を漱ぐこともしません。動物達はそれぞれ、人間とは異なる固有の歯および口の形態、捕食能を有しています。彼らは自然界の生の動植物を食し、生の繊維性食材で自然に、歯や口の汚れを取り除く生存本能をもっています。しかし、近年のペット化した動物達は現代社会の人間と同様の食性・食域を持ち、食物に火を使い、切断し、柔らかく、粘性化と味付けした化学的加工の食品化など、飼い主と同じ嗜好の多様化に馴らされています。従って、ペット達にも歯周病の重症化がみられると言われています。こうした成熟社会の食生活では歯の機能と口腔の健康美を維持し、生涯歯(生命の続くかぎり噛める自然歯)を志向するための英知を持って、歯・口腔の汚れを取り除き、疾患の予防を図らなければなりません。歯を磨くでなく、腕(技術)を磨きましょう。

 口腔細菌と歯磨き
現代人は、生活習慣として、朝、睡眠から目を覚ますと、「口を漱ぎ」、「歯を磨き」「顔を洗う」ことが、歯と口腔の清掃が疾患予防のために重要であることを意識しているからです。その証拠としてDr.Löe,H.(1970)の研究によると、ある集団に歯ブラシを中止すると10日間で全員が歯肉炎になり、歯ブラシを再開すると歯肉炎は消失すると言う実験報告があります。一方、無菌飼育動物の歯肉に機械的刺激(歯肉溝内に異物)を加えても歯肉炎は起こらず、歯槽骨の吸収も無く、ただ機械的刺激による傷が見られたのみであったが、そこに微生物を介在させると歯肉の炎症と歯槽骨の吸収が生じたと言う実験報告(Rovin,Costich、1966)があります。従って、細菌などの微生物の棲息と、その代謝物質が歯周病の元凶であり、さらに機械的・物理的刺激が炎症の消長に関与することが証明されています。
誰の口腔にも、常在菌が生息し、唾液中は約700種ほどの細菌の代謝物質に曝露され、歯面には細菌の塊である歯垢(プラーク)の沈着や歯肉溝内(歯肉縁と歯の間にあるポケット)には分泌液1mg中には約10億以上の細菌が蠢いています。例えば、肛門と口腔の汚染度を比べると、口腔の方が菌種および菌数的にも、遥かに多く、肛門より、腔が汚い場所であると言えます。しかし、通常の場合、歯肉や口腔組織には病気が見られません。これらの細菌は腸内細菌と同様にオーラルフローラ(細菌叢)を形成して、均衡を保って、生体と共生関係にあるからです。 従って、口腔内の全ての細菌を死減(不可能)させるのでなく、歯周病起炎菌や虫歯起炎菌を量的質的に抑え(歯垢の抑制/プラークコントロール)、機械的に歯質や歯周組織を侵害(悪さ)しないようにすることが、一番大切な予防策です。

  歯・口腔の清掃用具
そこで、歯垢を効率よく除去するための道具して歯ブラシと歯磨剤などが考案・開発・販促されていますが、その良し悪しはの評価は曖昧で、何を基準に決めればよいか?・・・、個人好みの域を脱しません。この点、過去に数多くの研究記事はありますが、各人各様の論説で、取留めがなく、歯磨き度、清潔度の比較・数値化が困難のようです。私達は、歯・口の磨き度、清潔度は清爽感と言うべき自己の感覚的満足度やブラッシング時間の満足度で、漠然と理解しているにすぎませんが、大切なことは、口腔内にある凹凸物(歯)を清掃する意識と熱意が重要です。
一般論として、成人の「歯磨き時間」は15~20分は必要と言われますが、朝の平均的「歯磨き」時間は2~3分間が多く、なかには30~50秒間程度だ、と言う人もいます。時間が長ければ良いのではなく、個人に合った「磨き方?」「刷掃用具」の適正化が大切(歯科医による診査・個別指導を受ける)です。特に、睡眠中は唾液の分泌量が減少(特に高齢者)するため口腔の酸性度が高まり、歯質を溶解することが知られていますが、実際、歯を溶かすには24時間以上を要すると実験的に言われていますので、睡眠前の1日1回刷掃法の習慣と励行は、口中の酸性度を抑え、歯の脱灰を防ぐことができます。
近年、食後や入浴中、就眠前に歯ブラシを使う人が多くなり、特に若い人達は口腔の衛生管理に関心が高くなっていますが、歯磨きの回数、方法、時間の長短、刷掃用具、歯磨剤など、それぞれの選択は各人各様の好みで決められているようです。

 歯の汚れ(歯垢・歯石)の付着部位
摂食により、自分自身の歯が汚れる部位を歯科医の指導のもと、歯垢検知液を使い、歯面の汚れを染め出し、着色個所の確認と、その汚れが染まったを部位を、まず自分流の刷掃(ブラッシング)法を行い、自身の刷掃・清掃能を知り、それを自覚して、歯科医師および歯科衛生士の適切な指導を受けて、効率の良い刷掃法の習慣を覚えることをお勧めします。

 歯垢・歯石が付き易い部位は、主に、次の3個所です。
 *赤で示す

1.歯頸部・辺縁歯肉⇒歯周ポケット

頬側・舌側の歯頚部・歯間部の歯垢・歯石の沈着を示す

2.歯間部⇒隣接面
スライド2

欠損部の歯間部・歯頸部は歯垢・歯石が沈着易く,取り難い

3.咬合面の溝
スライド3
咬合面の溝(裂溝)にも汚れが付き、虫歯(う蝕)に成り易い

 歯磨きの歴史
私たちは、昔から日常的に歯の汚れを取り、口を清潔にする動作を「歯を磨く」と言う表現で、何の抵抗もなく、慣用句として使っています。
人類の生活は、昔から「歯の汚れ」を取り続けて進化してきました。紀元前1500年頃エジプトのパピルスに、研磨(砂)剤、歯磨剤(dental powder, dental cream)の記載があります。アジヤ諸国では、梵語に歯磨剤をdanta-Sana(ダンタ・シャーナ;淨歯粉)と言い、楊枝(かわ柳/歯木;danta-kasthta ダンタ・カシュタ)とともに淨歯作法として、インド-中国-朝鮮半島をへて、仏教経典の儀式の一つとして、伝えられた記録があります。日本における歯磨きに関する記述は「道聴塗説」大卿良則著の下第15編に“歯磨きのはじまりは寛永二十年丁子屋喜左衛門が朝鮮人の伝を受けてこれを製す”と記載されているのが最も古く、約400年前の徳川家光の時代のことです。実際はもっと古くから人間の生活習慣行動の一つとして、柳の小枝を潰して刷毛状にした楊枝(ブラシ)に、砂や粘土、貝殻片、塩などを石臼で細粉し、それに丁子や竜脳などの香料を混ぜた琢砂(タクサ;昔は玉を磨く意味で、磨き粉の意味)で淨歯が行われていたようです。日本では、「歯磨粉」と呼んで、粗い粉末(研き砂)から、次第に細粒子化がすすみ、現在では、糊状、ペースト状となり、さらに近時は液状化や抗菌成分を加えた薬剤に進化し、研磨材の域から脱したにも拘らず、製造・販売メーカは「歯磨剤」と称して販促しています。この点、業界の意識改革の必要性が指摘されるところです。
一方、歯磨き道具(植毛と把持できる棒状の物)或いは歯の刷掃具(現在一般に使用されている歯ブラシ)は明治以後、近代化が進むとともに材質、形態の合理性、使用感を求めて改良が重ねられてきましたが、その目的は、常に歯面に付着している汚れ、プラーク(歯垢)を人工的(物理的)に取り除くための道具として、基本的には棒状に刷毛を植え付けた歯口清掃用具として、生活必需品の一つとして、プラスチック製の手用歯ブラシを中心に進化を遂げ、近年、刷掃効率をあげるために、歯間部専用の歯間ブラシやフロス(糸楊枝)などが改良され、さらに電動歯ブラシが開発され、それらの多彩な種類が市場を賑しています。
それら歯ブラシの刷毛部(植毛部)は、自然毛(豚毛、馬毛、羊毛、狸毛)が古く、衛生面や吸水性、耐久性などから、近年は、専ら合成ナイロン毛が使われ、植毛の長さ、硬軟性、毛束など、把持部は木製からプラスチック、滑り止めにゴムが付いたものなど、各製造メーカの商業ベースで発案され、販売競争のなか、売らんがためのコマーシャルで、多種多様な製品が販売されています。一方、臨床歯科医の多くが、意外に歯ブラシ用具に「拘り」を持っていないのも問題と言える。

 何故「歯を磨いてはダメ」か
人間の体で一番硬い組織は、歯冠表面を覆うエナメル質です。モースの硬度計(ダイヤモンドが一番硬い/10を基準)によるとエナメル質は6~7度と言われ、歯根表面の象牙質が4~5度程度(象牙の硬さと同じ)で、それぞれ厚さ(歯根の太さ)には、民族差、個人差があります。
近年の高齢化社会においては、自分の歯を残して、食生活を快適に、健康長寿とともに「生涯歯」の理念が高まり、厚労省提唱の「8020/80歳で20歯」運動が功を奏しているのか、現在、80歳で残存歯20本以上の高齢者が40%を超えたと報告されています。こうした高齢者の「歯磨きの仕方」は、無意識に“横磨き習慣”がクセになっているようです。そこで高齢者の残存歯を診ると歯の変色とともに、程度の差はありますが、100%の状態で歯の付け根部(歯頚部)に楔(くさび)状の欠損が見られ、歯肉が退縮して歯根露出(歯が長く、むき出る)し、虫歯になっていたり、歯がしみたり、食片が止まったりして、老人特有の歯と口元になっています。それに、歯科治療痕として、歯頸部にレジン系充填物の治療痕が散見され、その周囲には虫歯の変色が見られます。
これらの原因は、長年の習慣的「歯磨き」と言う無意識による歯ブラシの“横磨き”動作が、歯肉辺縁や歯根面を機械的摩擦によって、削られ、摩耗して歯質が減少するからです。これを歯ブラシの乱用と解して記述されているが、乱用とは、「力まかせに横磨き」の意味と理解すべきです。他方、歯面を脱灰し、白濁化とともに実質欠損を伴う「酸触症」がありますが、これは酸を吸う 職場における職業病の一種で、歯の横磨きが原因ではありません。しかし、近年の高齢化とともに、食生活の健康志向による食酢・クエン酸などの嗜好食材が推奨され、酸化食材の長期摂取、例えば、レモンや赤ワインなど常飲する方々に「酸触症」が見られる事がありますが、酸触症(歯のエナメル質の脱灰))は口腔内がPH5.5以下の状態が24時間以上続くと、リスクは高いが、食後のうがいやお茶で酸性口腔内を中和したり、食後のブラッシングすることにより、「歯が溶ける」現象は回避できます。
困った事に、横磨きの悪癖は機械的に歯の中心部にある歯髄腔(血管・神経の存在)に影響して、歯髄狭窄を招き、歯髄炎や知覚過敏を生じ、さらに歯髄壊死、歯根膜炎、根尖性歯周炎などを惹起し、症状の出現(鈍痛、歯がしみるなど)とともに治療を必要とする事態に陥いります。こうした習慣的横磨きが原因で起こる歯髄(神経)症状の治療は難易度が高く、特に、奥歯(複根歯)に対する歯髄治療は治癒率が低く、抜歯を余儀なくされるケースが少なくありません。そのため、患者さんにとっては未治療で、一見無傷な歯を抜くことに抵抗があり、トラブルの原因になります。一方、治療済みで修復冠が被った歯で、無症状であっても横磨きを続けると前歯や奥歯の付け根部が深く削れ、歯が折れ(根破折)、止む無く抜歯される場合があります。

「歯を横磨き」癖の弊害を、
 次にまとめると
①歯肉の退縮
②歯根面の摩耗と楔状欠損
③歯根摩耗部のう蝕(虫歯)
④歯周病の誘発
⑤歯根欠損部に食片残渣が溜まる
⑥開口時(笑顔)の醜さ、審美障害
⑦歯髄の狭窄化
⑧歯髄の知覚障害(過敏および鈍麻)
⑨歯内治療を困難(特に奥歯)にする
⑩加齢とともに摩耗部で歯が破折する
⑪歯根が擦り減り、無症状で、硬い物を
噛んだ時、歯の動揺を来す。

ここに示す症例写真は、高齢者の横磨きによる歯の弊害を示す。
歯と歯肉は、生体の末梢組織で軟組織と硬組織が接合した部位です。言わば、二枚貝の貝殻と貝柱の関係に似ています。、歯と歯肉は常に摂食による機能下で、歯肉の毛細血管は外来刺激や細菌に曝されており、循環(血流)障害を起し易く、その結果、歯肉退縮を招くことになります。
症例:
①78歳 男性
スライド4

②81歳 男性
スライド5

③ 63歳 女性
スライド6

① 、②、③は高齢者の習慣的横磨きによる
歯根面唇側の摩耗を示す

④60歳 女性(審美歯冠修復が施されている)
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⑤82歳 女性
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④、⑤は不適合な歯冠修復物。歯肉炎と黒色化した齲蝕と歯肉退縮がみられる。
⑤は修復冠口蓋側に根面の露出と齲蝕がみられる。これは修復冠の辺縁(フイニッシング・ライン)の接合不良。

「横磨き」の弊害は顎骨と歯列弓の
          解剖学的原因もある

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A. 解剖学的に歯列弓は顎骨の外側に位置し、特に前歯・小臼歯部は歯根の唇側面は骨が菲薄であり、歯周疾患発生とともに、過剰な咬合力や物理的負荷により、骨破因子が働き、歯根露出を招き、さらに歯ブラシの習慣的横磨きにより、歯根の摩耗を助長するものと思われる。
スライド10

B,犬歯、小臼歯部の唇・頬側骨壁の菲薄化により、骨壁の裂開、開窓を生じている
スライド11

C.上顎大臼歯の頬側と口蓋側の根面摩耗(➡)を示す。
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D,同✕線像は複根歯の歯髄腔の狭窄。

「歯を磨く」用語は
  「歯を横磨き」する悪癖を生む

日本では昔から、歯の汚れや歯垢を取り、口腔を清潔にする行動表現を「歯を磨く」と言います。諸外国では「歯を磨く/polish」とは言いません。欧米では「歯をブラッシング/ Tooth brushing又はTooth clean」、ドイツではZähne putzen/ツェーネ プッツェン(歯の清掃・清拭)、フランスはBrossen ä dentis,イタリアはSpazzolino  da  dentiと表現し、インドでは「淨歯」,中国で 「刷牙」と言い、「歯を清掃する」、「歯のブラッシング」の意味合いが強い表現である。我が国や韓国では、何故か「歯を磨く」と言う生活用語が定着しており、歯の健康と口腔衛生を意識しつつも、ひたすら毎日、無意識に歯をゴシゴシと擦り、削る、横磨きの習癖を続け、なかには、横磨きは悪いとブラッシング指導を受けても一旦身に付いた横磨きの悪癖は止むことはないようです。その結果、加齢とともに歯は摩耗して、種々な障害を招くことになります。 高齢社会における今日、老若男女、全ての有歯者は「歯の横磨き」の弊害を認識し、「歯(は)ブラッ歯(し)ing」に努め、健康長寿とともに健康・咬歯を志向した意識改革と歯・歯肉を侵害しない刷掃用具を開発・改良するとともに口腔内の歯・歯肉の多様性(凹凸性)に対応するブラッシングが必要がある。

 歯ブラシ「歯の刷掃用具」の
       植毛・毛束の改良が必要
歯ブラシは、歯面、歯肉を刷掃して、歯垢や食片残差を取り、口腔を除菌・清潔する道具です。各自の歯列に適した植毛と毛束(tuft)、その形態と配列が効率よく、清掃ができて、歯や歯肉に弊害のない素材が求められます。近年、歯列矯治療中の専用ブラシや多種類の歯間ブラシが開発され、さらに身体的障害がある方々のために電動歯ブラシが販売されていますが、まず基本的刷掃用具(朝晩使う通常ブラシとして)、為害性の少ない効率の良い専用歯ブラシが必要です。
しかし現代人のスピード化した日常生活のなかでは、まず毎朝の歯ブラシ・刷掃を最大公約数的に有効よく、傷害なく約1分前後(成人の大多数の人の刷掃時間)程度で仕上げる成人用(シニヤー/高齢者)の刷掃道具が必要です。なお、歯間ブラシやフロスは毎朝目覚めに使用する人は少なく、多くは食後や休息時に使用している。
従って、毎朝励行される通常歯ブラシの使い方は 多少の横磨き動作があっても歯面を侵害しない毛束・植毛列を歯面凹凸に対応する緩衝列(毛束が歯面に強く当たらない)を設け、シンプルで、効率の良い毛束列と毛質および持ち易い把持部からなり、複雑なブラッシングの原則を強いることなく、効果的なプラークコントロール(細菌の活動抑制)が出来るものでなければなりません。

 その要件:
①毛束の横動き動作でも、根面への加圧が少なく、ソフトタッチで、歯を摩耗しない
②歯間部に束毛が入りやすい
③歯の根元(歯肉縁・歯肉ポケット)に届く
④奥歯の遠心部、孤立歯の歯周縁に届く
⑤毛先が細く、しなやかである
⑥毛束の長さは12~13mmが適切である
⑦毛束の根元に付いた汚れが取れやすいこと
⑧把持部は持ち易く、棒状で違和感がない
⑨抗菌性素材で、清潔に保ち易いこと
以上が、日常的に朝の歯面清掃・刷掃用具として、最大公約数的に望ましい要件であると思われる。

 適正な改良歯ブラシの特徴と形態 (注:実用新案登録中)
歯の清掃用具(刷掃具)は、口腔内の歯・歯列形態や個人の刷掃法による物理的影響をうる特殊性がある。「物を磨く」と言う概念は一般に「皮靴を磨く」「石を磨く」などの行為は平面的空間で行われ、ブラシの形態は単純であるが、歯は口腔粘膜に包囲された密閉環境にあるので、一般的な「ブラシ」の形では、不十分である。さらに歯牙形態は凹凸で、経年的に疾患を罹患し、その治療による人工物などで、構造的・形態的変化を惹起するので、生涯的推移を考慮した日々の口腔管理において、歯・歯肉に侵害を与えず、短時間で、簡単に、効率良く、歯の汚れ、歯垢除去できる特化した歯ブラシが必要である。そのキーポイントは硬組織である歯面(凹凸)、軟組織である歯肉に対する毛束列に緩衝帯(毛束による為害性加圧を避ける)を設ける必要性がある。以下、二つのタイプを図示します。
A type : 形態(形と毛束列)
● 毛束   ✕:緩衝帯(毛束なし)
毛束列;
前方より横2列-3列-4列-✕-4列-4列―✕-4列-3列-2列  縦列毛束8列、中心部x6列。

前面
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側面
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 type:形態(形と毛束列)
●毛束    ✕緩衝帯(毛束なし)
毛束列:
先端より 1列—2列-2列-2列-2列—2列
-2列 -1列 、縦8列、✕8列

毛束面
スライド15

側面
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 新開発歯ブラシの使用法
前事項で示した新規開発した歯ブラシの最大の特徴は刷毛列に緩衝列(毛束の無い列)を設けてあることです。従って、歯面・歯肉に対しソフトにタッチすることが出来、使用者は自分の歯面の汚れ部位を意識しながら、合目的的に刷掃(ブラッシング)を励行することにより、機械的に歯を侵害しないこと、歯垢・歯石の沈着を防ぎ、快適な食生活を維持し、生涯歯とともに健康長寿を全うすることを志向する。
1.臼歯部:a.最後臼歯遠心面、歯頸部・歯周ポケット、歯間部、咬合面などへ、毛束の到達性は極めて良好である。
スライド17

2.前歯部:毛束を切歯先端から、当てることにより
唇・舌的歯頸部・歯周ポケットへの刷掃が
的確に行える
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3.矯正治療中:矯正装置の刷掃と歯間部、
歯周へ毛束のアプローチが的確に行える
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4.インプラント治療中
①連結人工歯冠・歯間部、歯周へ毛束のアプローチは極めて良好である
スライド20

②磁性アタチメントやコーヌス冠、ドルダーバー症例に対する毛束の当て方。

スライド21

以上、歯ブラシに関する論説と、その方法論、そして口腔管理に特化した新開発の歯ブラシについて述べたが、今後の展開は当学会研修会、セミナー等で発表します。ご期待下さい。